新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言が5月6日から延長される見込みとなり、学校の休校期間も長期化しそうです。
これを受けて、4月29日、首相の安倍晋三は、学校への入学時期を9月とする「9月入学」への移行を検討する意向を表明しました。
安倍晋三は、「子どもたちや保護者、社会全体に大きな影響を及ぼすのだから慎重に、という意見があることは十分に承知している」としつつ、「前広に様々な選択肢を検討していきたい」と話しています。
この記事では、「9月入学」の入学卒業、受験、就職などへの影響について、メリットとデメリットをまとめます。
Contents
9月入学のメリット
コロナ休校による学力格差の是正
このタイミングで9月入学が議論に上った最大の理由は、コロナ休校が長期化し、生徒の間の学力の格差が広がってしまうことへの心配です。
学校によっては、オンラインを活用して授業を行っているケースもありますが、住んでいる地域や学校の取組み、そして家庭の経済力によって格差が生じてしまうのは避けられません。
対応が進んでいない学校では、1年間の学習過程を十分にこなせないおそれがあります。
今年の入学時期を9月にすれば、しっかりと1年間の学習時間を確保することができるメリットは大きいです。
また、文化祭・体育祭といった学生生活のイベントを省略せずに、満喫できます。
学生生活を取り戻したい! 高校生による署名活動
例えば、4月19日、大阪市の公立高校3年、西野桃加さん(17)と中尾微々さん(18)は、ネット署名サイト「Change.org」で「Spring Once Again~日本全ての学校の入学時期を4月から9月へ!」を始めました。
この中で、9月入学へのメリットとして、次の4点が挙げられています。
①全国一律で休校にすることで、9月から平等な教育を受けられる可能性が高い
②入試などもそれに準ずることで混乱を抑えることができる
③海外の学校と足並みをそろえることによる留学の推進
④かけがえのない青春を取り返すことができる
https://twitter.com/Miu57599809/status/1251787101068120065?s=20
日本の教育の国際化
欧米では、9月入学がメインです。
このため、日本も9月入学に移行すれば、日本人の海外への留学や、日本への留学生の受け入れがやりやすくなります。
9月入学により、日本の教育の国際化が進むわけです。
この点は、従来から9月入学のメリットとして挙げられていました。
国際化を主張する人は、このコロナの機会に、一気に9月入学を進めたい、という想いがありそうです。
例えば、東京都知事の小池百合子は、この立場で9月入学を主張していますね。
ペスト後にルネサンスが残ったこと同様、新型コロナから何を社会変革の成果として残せるか。
この観点も今こそ大切と考えます。
ただしコロナ封じ込めが最優先です。小池都知事、9月入学「行っていくべきではないか」 https://t.co/oAPyqTpUwn
— 小池百合子 (@ecoyuri) April 29, 2020
「世界が疲弊しているこの状況で、日本として何を残すのか。はんこを書類からなくすだけでは寂しい。世界の歴史の中でコロナが、日本にどういう影響を与えたのかというのを残すくらいの、大きな構えでやっていただければと思う」
「9月入学は、グローバルスタンダードである」
「もともと明治時代は9月だったんですね。ですから決して、日本にとって4月がもともと変えられないものではない」
9月入学の入学卒業時期、入試、就職への影響
もっとも、9月入学に移行しようとすると、入学卒業、入試、就職などに大きな影響があります。
入学卒業時期への影響
現在は、「4月2日生まれから翌年4月1日生まれ」の生徒までが、同じ学年となっています。
これを単純に9月入学にスライドすると、「9月2日生まれから翌年9月1日生まれ」の生徒が、同じ学年になることになります。
さらに、移行する年には、その年の「4月1日生まれから9月1日生まれ」の生徒も、同じ学年に合流することになります。
移行年だけ、1年半ぶんの生徒が同学年になることになり、前後で学生数が大きく変わってしまうわけです。
先生や教室の数が確保できるか、といった問題も出てきます。
入試への影響
入試については、まず時期をいつにするかが問題になります。
現在の2月入試をそのままスライドさせると、9月入学の場合には8月に入試を実施することになります。
現在の冬の入試も、雪による電車の遅延やインフルエンザの蔓延などの問題があります。
他方、8月の入試については、猛暑の中で夏バテが心配ですね。
また、夏の甲子園など、色々な学生イベントとの調整も膨大な量になりそうです。
また、移行年だけ、1年半分の学生が同学年になれば、移行する年の入試は大激戦になってしまいます。
前後の学年との公平性をどう確保するのかも問題です。
就職への影響
現在、日本企業では、4月入社が一般的で、それに合わせて前年の春に就職活動が行われています。
公務員など、試験が必要なものもあります。
これらが9月入学に合わせてどのように変更されるのか、学生がついてこれるのか、など非常に多くの問題があります。
9月入学のデメリット
9月入学のその他のデメリットとしては、次の点も指摘されています。
今年の9月入学への移行は拙速すぎる
9月入学の大きなメリットでる学習機会の確保は、今年に移行しないと実現しません。
他方で、すでに5月であり、まったく準備期間がありません。
このため、今年の9月入学への移行は拙速すぎる、と批判されています。
今年9月入学に移行する場合の学生の費用負担
今年の学生は、来年3月までが1学年であることを前提に、授業料や家賃を準備しています。
これがいきなり9月入学になれば、半年分で追加の費用が掛かるため、学生の費用負担をどうするかが問題になります。
コロナ問題でバイトの機会も減っている中、費用が払えずに、退学を余儀なくされてしまう学生も出てくるかもしれません。
法改正が必要(会計年度など)
現在、国や地方自治体の会計年度は、4月から翌3月まで、で定着しています。
9月入学に移行する場合には、こうした会計年度や、それと紐付いている教員の人事異動などとも調整が必要になります。
法改正も見込まれ、今年に、9月入学への移行を実現するためには、短時間での膨大な作業が必要にります。
日本の習慣に合わない
日本の習慣として、3月の卒業や入学が定着しています。
卒業ソングも、春や桜のイメージですよね。
こうした中で、9月入学への移行に国民の理解が得られない、という指摘もあります。
MASAの意見
9月入学にはメリット・デメリットの双方があります。
ツイッター上でも、賛成・反対の意見に大きく分かれています。
賛成・反対それぞれの言い分にはもっともなところがあって、全員が納得する結論を出すことは難しいです。
最終的には、政治判断になるでしょう。
もし今年に9月入学に移行するのであれば、生徒や先生が不利益を受けないよう、最大限のサポートが必要となります。
記事をご覧いただき、どうもありがとうございました!