日本郵政グループで、郵便局員100名、かんぽ生命社員20名の計120名が、持続化給付金の「偽装申請」を行っていたことが発覚しました。
持続化給付金は、新型コロナの影響で売上が半減した中小企業や個人事業主に対して、それぞれ最大200万円/100万円を支給するものです。
しかし、郵便局員やかんぽ生命社員は、当然サラリーマンです。
なのに、なぜ個人事業主として、持続化給付金の申請をすることができたのでしょうか?
この記事では、かんぽ生命販売による持続化給付金の「偽装申請」のカラクリと、サラリーマンが個人事業主を兼ねるメリットについてまとめます。
郵便局の保険販売員が持続化給付金を偽装申請できた理由
郵便局では保険販売の営業手当を事業所得に計上
今回、持続化給付金の「偽装申請」を行った郵便局員やかんぽ生命社員は、かんぽ生命の販売員です。
実は、こうした保険販売員の所得は、次の2つに分けられます。
①会社からもらう通常の給料 ⇒ 給与所得
②保険の販売成績に応じて支給される営業手当(歩合給) ⇒ 事業所得
保険販売員は、このうち、②の営業手当を、事業所得として確定申告しているわけです。
日本郵政グループでは、2019年7月から、かんぽ生命の不正販売のため、保険販売を自粛しています。
保険販売の自粛のために営業手当が大きく減った場合、当然、新型コロナの影響ではないですが、外形上は区別がつかないことを悪用して、保険販売員が、個人事業主として持続化給付金の「偽装申請」を行った、というわけです。
持続化給付金の偽装申請への対応
当然、こうした偽装申請は不適切ですから、日本郵政グループは、社員に対して、申請の取り下げや既に給付金を受け取っている場合の国への返還を求めています。
これに対して、日本郵便の社員10数人は取り下げに応じておらず、引き続き取り下げを働きかけています。
また、経産省(中小企業庁)では、申請内容に不審な点があれば調査を行い、不正受給については、給付金の全額に延滞金などを加えた額の返還を請求するほか、悪質な場合には刑事告発を行う、と説明しています。
サラリーマンが個人事業主を兼ねるメリット!
もちろん、持続化給付金の「偽装申請」は不適切で、許されないことです。
しかし、「会社から給料(給与所得)をもらっているサラリーマンが、成果給について事業所得として確定申告できる」という事実は、とても興味深いですね。
会社と調整がつけば、「サラリーマンが個人事業主を兼ねられる」ということですから。
第1に、事業所得として確定申告を行う部分については、青色申告や経費計上により、合法的に節税が行えます。
これに対して、給与所得の部分については、こうした節税の余地はほとんどありません。
また、健康保険、年金などの社会保険料は、給料(給与所得)に応じて決まります。
このため、所得の一部を事業所得とできれば、社会保険料を安くすることができます。
ビジネス書のベストセラー作家である橘玲も、この点に注目しています。
この報道で興味深いのは、「かんぽ生命と、郵便局で保険を取り扱う日本郵便の営業担当社員は、自社の給与所得以外に、保険契約に伴う営業手当を事業所得として受け取り確定申告している」です。サラリーマンが成果給を事業所得で受け取ることを税務当局は認めている?https://t.co/1mHG03pviR
— 橘 玲 (@ak_tch) May 28, 2020
もしこれが合法なら、サラリーマンは成果給を事業所得にしてもらうことで、経費分を計上して課税所得を減らせます。すべての企業が同じ制度を導入すればいいのでは。
— 橘 玲 (@ak_tch) May 28, 2020
生命保険とかで歩合給の人は基本的に事業所得者です。ノベルティグッズのボールペンとかパンフレットとかも自前で購入して使っています。
— SKMT/坂本英樹 (@sakamotoh) May 28, 2020
MASAの意見
持続化給付金の「虚偽申請」自体は不適切で、かんぽ生命の不正販売の教訓がまったく生かされていないな、とがっかりします。
他方で、「サラリーマンが個人事業主に兼ねられる」というのは、とっても面白いです。
普通のサラリーマンには縁遠いかもしれませんが、賢く生き残っていくために、頭の体操はしておきたいですね。
記事をご覧いただき、どうもありがとうございました!