金融庁が、スマホ決済大手に立ち入り検査へ
2019年12月29日の毎日新聞で、金融庁が、スマホ決済事業者に対する立ち入り検査を始める方針を固めた、と報道されています。
対象は、金融庁に2019年11月末現在で登録されている資金移動業者68社のうち、主にスマホ決済を提供する企業。具体的には、市場シェアが大きいPayPay、LINE Pay、メルペイなどが含まれる、とされています。
立ち入り検査の実施時期は、2020年1月下旬からで、仮に検査において不備が見つかれば行政処分の対象になります。
スマホ決済を巡る光と影
QRコードなどのスマホを利用した決済・送金については、ここ数年、新規参入が相次ぎ、競争も激化しています。
2018年12月のPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」や国によるキャッシュレス消費者還元事業(2019年10月~実施中)は大きな話題になっていますし、これまで現金しけ受け付けなかった小さな店舗で、QRコード決済が利用可能になる場面もよくみかけるようになりました。
しかし、残念ながら、スマホ決済では、トラブルも続いています。
2018年12月には、PayPayに関する不正利用がありました。2019年7月には、セブン&アイ・ホールディングスによるセブンペイが、開始直後に不正アクセスが発覚して大きな批判を浴び、いきなりの撤退を迫られました。2019年11月には、楽天ペイが障害で利用できなくなる、という事件もありましたね。
金融庁はこうした事態を問題視しており、立ち入り検査では、スマホ決済事業者の安全管理や利用者保護の体制が適切に整備されているかが、チェックされることになります。
利便性と安全・安心のバランスが課題
資金移動業者は、免許制の下で厳しい監督を受ける銀行とは異なり、参入し易い登録制がとられていて、100万円までの決済・送金を行うことができます。
最近のキャッシュレス化の進展に、従来の金融機関の発想にとらわれない、IT企業(PayPayはソフトバンクとヤフーが出資してますし、LINEやメルカリもそうですね)などによる新規参入が大きく貢献しているのは、間違いのないところです。我々消費者の利便性は大きく向上してきています。
他方で、もちろん日々の決済に使うものですので、「使いたいときに、ちゃんと使える」という安全・安心もとても大切です。
QRコードで決済しようと思って現金を持っていかなかった時に、システム障害でスマホ決済が使えなかったら困りますし、不正利用されたら、やっぱり現金が一番だな、ともなりかねません。
特に、日本では、高齢化社会の下で不正利用への警戒感が他の国よりも強いですので、こうした国民感情を受けて、監督当局である金融庁が、スマホ決済事業者の内部管理体制を厳格にチェックしようとするのもわかります。
もっとも、金融庁による監督・検査があまりにも厳しくなり過ぎると、スマホ決済事業者によるイノベーションを阻害してしまう怖れがあります。
スマホ決済をはじめとするキャッシュレスはまだまだ発展途上なので、新しいサービスが大きく成長する前に、締め付けを厳しくし過ぎて、「角を矯めて牛を殺す」ことになってしまっては、本末転倒ですね。
スマホ決済がより便利に、かつ安全・安心に利用できるよう、官民が適切に連携・役割分担して、うまくバランスがとられていくことを期待したいところです。
<参考リンク>
金融庁がスマホ決済大手に立ち入りへ ペイペイなど 不正利用後絶たず(毎日新聞、2019年12月29日)